● TOP > プラズマローゲンについて
次はプラズマローゲンについてお話ししていきます。
プラズマローゲンは、その分子内にビニルエーテル結合という特殊な結合子を保有するリン脂質です。
哺乳動物の全ての組織に存在し、人体のリン脂質の約18％を占めています。
特に、脳神経細胞、心筋などの重要な場所に多く含まれています。
プラズマローゲンにはエタノールアミン型とコリン型の2種類が多く見られます。
プラズマローゲンと認知症との関係が初めて論文になったのは、1999年のアメリカでした。アルツハイマー型認知症で亡くなられた方の脳ではプラズマローゲンが減少しているという内容の論文でした。プラズマローゲンが前頭葉と海馬で有意に減少していることが報告されています。
ジアシル型リン脂質はあまり変化しておらず、プラズマローゲン型リン脂質のみが減少していることが分かったのです。
2007年には、人間の血清からプラズマローゲンを定量化することができるようになり、アルツハイマー型認知症の方は健常者の方と比較してプラズマローゲンが減少しているという論文がアメリカから発表されました。
この論文は生存中のアルツハイマー型認知症患者の血清でプラズマローゲン減少を証明したという意味で画期的論文です。
プラズマローゲンを補給したら、脳はどのように変化するのでしょうか？
それを我々は、研究しました。
まずは、動物実験を行いました。下図において老化促進（SAMP8）マウスとは、実験用に作られた老化しているマウスと考えてください。SAMPR1と
記述されたマウスは一般的なマウスです。
海馬歯状回とは、記憶や空間学習能力に関わる脳の器官。虚血に対して非常に脆弱であることや、アルツハイマー型認知症における最初の病変部位としても知られており、最も研究の進んだ脳部位です。図は神経細胞染色を行った結果です。
NeuNは神経細胞を表し（緑色）、DCXは幼稚な神経細胞（赤、新生した神経細胞）を表しています。
Mergeは、その2つを合わせたものです。老化したネズミ（SAMP8）で普通のエサの場合と比較して、プラズマローゲン含有エサを与えたネズミは明らかに神経細胞が新生しています。(図２参照)
別の研究では、同じくマウスを使用して、プラズマローゲンの腹腔内投与により、
「プラズマローゲンは神経炎症を抑制する」
プラズマローゲンの全身投与により、
「プラズマローゲンはアミロイドベータの蓄積を抑制する」
プラズマローゲン0.1%をエサに含有することにより
「プラズマローゲンはアミロイドベータによる学習記憶障害を改善する」
ことを証明しました。
2014年2月に鶏ムネ肉由来プラズマローゲンで行ったアルツハイマー型認知症患者に対するヒト臨床研究の結果が福岡大学から発表されました。
「アルツハイマー型認知症患者の血中Pls動態に関する研究およびPls含有食品の認知機能改善効果－単盲検試験－」（Plsとはプラズマローゲンのこと）という題名で始まるこの発表では、福岡大医学部神経内科 合馬 慎二助教は次のことを発表しています。
1.アルツハイマー病型認知症患者では血液中の
プラズマローゲンが減少した。
2.60歳以上の軽度もしくは中等度のアルツハイマー型認知症患者40例を対象に鶏の胸肉より抽出されたPls（プラズマローゲン） 含有食品（ドリンク）を用い、6ヶ月間の服用及び服用後の後観察を行った。
プラズマローゲンを6ヶ月間服用者で、統計的に有意に認知機能が改善した。プラセボ（偽薬）服用者は改善しなかった。
＊MMSE : 世界共通の認知機能テストの結果における改善。
＊プラセボ：偽薬の意味。プラズマローゲンを含む実薬と形も味も全く変わらず区別がつかない。
3.MMSEとは別の認知機能評価で、プラズマローゲン服用者で統計的に有意に注意力、実行機能が改善した。
＊介護者客観的評価 ―注意力、実行機能の比較－
プラズマローゲンの基礎と臨床
－アルツハイマー病に対する有効性－
2014年2月4日プレスリリース（報道発表資料）より抜粋
そして、2016年にわれわれは、健常者に対しての臨床試験を行いました。
試験の内容については、以下の通りです。
試験名称
プラズマローゲン含有サプリメントによる、
日本人の健常者に対する認知機能の改善
―無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験―
被験者の選定方法
135名の治験応募者から、認知機能疾病の治療中の方、漢方薬を含む薬を服用中の妊産婦及び本試験期間中妊産婦になる恐れのある女性、その他実行責任者が不適格と認定した方、を除外し、81名で治験をスタートしました。
試験方法
「ＭＭＳＥ」
ミニメンタルステート検査（Mini Mental State Examination、MMSE）は、認知症の診断用に米国で1975年に開発した質問セットです。30点満点の11の質問からなり、見当識、記憶力、計算力、言語的能力、図形的能力などを診断し、24点以上で正常と判断、10点未満では高度な知能低下、20点未満では中等度の知能低下と診断します。
（出典 Wikipedia）「内田・クレペリン試験」 計算速度および正確度で計算力を評価します。
「認知機能自己診断テスト」
０から４までの５段階評価で２が基準点（ベースライン）。２を超えると良評価となります。26項目について診断を行っています。
設問については認知症診断のアセスメントツールであるDASC(地域包括ケアシステムにおける認知症総合アセスメント)を元に、各病院が使用している主観的指標の中から適切な設問を選択しています。
主な結果
MMSEの結果は、12週後に鶏由来プラズマローゲンを摂取した郡内における比較で有意な改善を示しました。クレペリンテストは6週後にはプラセボ群との群間比較で有意差が認められ、改善されましたが、12週後には有意差が認められませんでした。
主観的指標による評価のプラセボ群との群間比較において、合計および記憶力に関する設問の過半数において有意に改善を示しました。
このことから、鶏由来プラズマローゲンの経口摂取には、「健常な中高年の方の加齢に伴い低下する認知機能の一部である、言葉、位置情報、状況などの情報の記憶力を維持する機能」が認められました。また、試験品が原因と思われる有害事象は認められませんでした。
鶏由来プラズマローゲンを摂取すると、小腸から取り込まれます。
しかしながら、PL-PE型のプラズマローゲンの場合は、PL-PEのSN2に結合している脂肪酸は一度切り離されてしまい、PL-PEはリゾ体となります。
その後、PL-PEは選択的にアラキドン酸という脂肪酸と結合して、 再合成された後、小腸上皮系から、取り込まれるという動きをします。
つまり、DHAなどの有用なω―３系の脂肪酸が結合していても、
ω―６系のアラキドン酸を再合成されてしまうという結果になります。
PL-PC型のプラズマローゲンは、リゾ体にならず、もともと結合しているDHAを結合したままで、取り込まれます。
PL-PCはDHAを脳まで運搬する誘導体の役目を果たし、結果としてAkt（プロテインキナーゼB、広範囲に影響を及ぼすシグナル伝達ネットワークの中心的物質）を活性化し、ペルオキシソーム（動植物や酵母など真核細胞に存在するオルガネラ）での生合成を活発にします。
その結果、生体内プラズマローゲンが増加します。
増加した生体内プラズマローゲンは強い抗酸化機能により、アミロイドβの蓄積やその原因になると言われている神経炎症を抑制するのです。
まず、脳の構成成分についてお話しします。
脳の構成成分は、脂質約60％、タンパク質約40％です。そして、脂質の内訳はコレステロール約50％、
リン脂質約25％、ドコサヘキサエン酸(オメガ3系）が
約25％です。
コレステロールは神経細胞を守っています。
ちょうど電気のコードが、電線 の回りを絶縁体でくるんであるようにです。
そして、リン脂質や、ＤＨＡは、神経伝達に大きな役割を持っています。脳には、約140億個もの神経細胞があります。しかし、これは脳全体で見るとわずか1割程度にしか過ぎず、残りはグリア細胞という神経細胞に栄養を送る役割を持つものです。